PwCは世界の消費者意識調査2018を公開。同社は2010年以降世界中の消費者を対象に消費行動の把握を目的とした年時調査を実施しており、今年は世界27ヵ国、22,000人以上が対象となっている。
調査レポートより、経済状況に対する消費者の印象や、ECの台頭に伴う実店舗の存在感、新たにみられる消費者行動に関する部分をピックアップし紹介する。
景気に楽観的な消費者
今回の調査では消費者の経済全般に対する安心感を把握するための質問を幾つか設け、同社が今年行った第21回世界CEO意識調査のデータと併せた結果、消費者、CEOともに景気に対して楽観的である事が判明した。
実際に、2018年における自国の経済全体の見通しについて消費者に尋ねたところ、経済状況が前年を上回ると答えた人は3分の1に上り、同程度になると答えた人は41%を占めた。これに対し、経済状況が悪化すると答えた人は21%にすぎない。
さらに、今後12ヵ月の個人支出に関して尋ねたところ、ほぼ4分の3の人が過去12ヵ月間よりも支出を増やすか、同程度に保つ予定だという。
とはいえ、各国の間には明らかな差がある。特にアジア各国は楽観的な傾向が強く、中国や一部の新興国でGDP成長率が安定していることが背景に考えられる。一方、悲観的な見通しが特に多い国は南アフリカ、マレーシア、英国、ハンガリーだ。南アフリカとハンガリーは景気後退とインフレ、英国はEU離脱、マレーシアは燃料とガスに関わる不安など、各国固有の懸念点が自信の低さに起因していると考えられる。
大手EC企業が市場を支配しているものの、小売業者には成長の可能性が十分に残されている
世界のBtoCビジネスにおけるeコマースのシェアは15%にも達しておらず、全ての小売業者にはまだ成長の余地が残されている。とはいえ、今回の調査では、回答者の59%がAmazonやJD.com、Tmallといったモール形式のサイトで買物をしていることが明らかとなり、その他の大手EC企業についてもそれぞれの市場で支配的地位にあるといえる。
また、Amazonで買い物をする消費者は2017年の56%から2018には59%に増加し、さらにAmazonでしか買わない消費者も前年よりも4%程度増加している。
だが小売売上全体でAmazon経由の売上は4%に過ぎず、その他のビジネスモデルの成長可能性は十分にあるといえる。ドイツではTchiboがベビー服や子供服のレンタルサービスを立ち上げるなど、一部の小売業者は全く新しいビジネスモデルを生み出してEC大手に対抗している。また、実店舗とデジタル戦略をバランスよく展開することで競争力を維持しようとする小売業者も存在する。
ECの台頭が小売業に影響を及ぼしている事実はあるものの、人々が実店舗に足を運ばなくなったわけではない。同社の調査によると、実店舗に週1回以上訪れる買物客の割合は2013年(42%)から2015年(36%)にかけて減少したものの、それ以降は一貫して持ち直し、2018年の調査では44%に達している。実店舗に頻繁に訪れる消費者は確実に存在していることから、新たなビジネスモデルに挑戦することで今後も成長を続けることができる可能性が小売業者にあるのだ。
37%の人が買物のきっかけはソーシャルメディア
ECは着実に成長しており、今や世界全体の小売売上の1割程度を占めるまでに至っている。特に、新興国市場ではオンラインで買物をする傾向強く、近年参入企業が増えている食品ECに関しては中国やベトナムで前向きな回答が過半数あった。
一方、実店舗が重要なチャネルとして留まっていることは事実であり、「オンラインで商品を注文し、実店舗で受け取る」という選択肢の提供も実店舗の客即増加に貢献していると考えられる。過去6年間の推移から実店舗は盛り返しをみせており、モバイルやタブレットからの購入も着実に増加している。だが、PCからの購入は停滞傾向にあり、モバイルがPCを上回る日は近いだろう。
また、もう一つの新たな消費行動として、消費者が他の消費者の意見を知りたがっていることが挙げられた。買物のきっかけをどのオンラインメディアから得ているか尋ねたところ、37%がソーシャルメディアと回答し、小売業者のウェブサイト(34%)、ブランドや小売業者からのメール(14%)であった。このことから、メールという手段が押しつけがましいセールスに否定的で、企業側に誠実さを求めている消費者に響いていないことが伺える。
今回の調査より、世界全体では景気に関して楽観視する消費者の方が多く、悲観的な見通しを持つ人は各国独自の経済・社会状況に起因することが伺われた。また、ECの台頭により大きく変化しつつある小売業であるが、実店舗の存在感は依然として大きいものの、スマホから商品購入が急増していることも見過ごすことができない事実として挙げられた。決済方法が年々多様化していることから、事業者は消費者が利用する決済方法のトレンドを掴んでおく必要がありそうだ。